キックボードとおばあさん
体調は、昨日一昨日に比べてだいぶ落ち着いた。
今朝もスッキリと目が覚めたので、日中暑くならないうちにと買い出しへ。
僕は、買い出しや近所を周るとき、徒歩かキックボードで行く。
キックボードって、子どもがよく乗ってる…多分、想像通りのやつ。最近は大人用のキックボードも出ているのだが、僕はそれを使っている。よく見る足で止めるタイプのブレーキと、前輪用のハンドルブレーキも付いていてタイヤも大きい、かなりガッチリとしている。
病み上がりではあるが、運動がてらに使った。
徒歩だと20分位のスーパーマーケット。
キックボードだとすぐだ。
駐輪場にとめて、ゼリーやポカリなんかを買った。
リュックに詰めて、スーパーを出た。
駐輪場に向かうと、僕のとめたキックボードをおばあさんが訝しげに見ていた。
邪魔だったかな…と、すみませんを言いながらすぐ出ようとした。
これ、あなたの?
と、おばあさんが聞いてきた。
皺に合った白髪と小花柄の割烹着。
心地良い歳のとり方をしているおばあさんだった。
(こういう言い方、女性はどう捉えるか分からないけど僕は自然体な彼女に好感を持てた)
僕のだと伝えると、彼女は一歩、前のめりになった。
凄いねぇ、これで行くの?
あ、はい。
これってあれなの?ガソリンとか要らないんでしょ。
要らないよ、これだけ、蹴るだけ。
あらそう、でも慣れるまで大変でしょ。
でも若いし運動神経良いからすぐか。
場所とらないから便利なんだ。
そうか、そうね、良いわね、気をつけてね。
はい、ありがとうございます。
すごく、心地良い時間だった。
お互いに笑いあったりもしながら。
終始タメ口をきいてしまったが(しかもいまさっき初めて会ったおばあさん)、話し始めてすぐ、不思議と自分が孫みたいな気持ちになって、普段人見知りする僕がぽんぽん人と会話していた。
別れ際の、気をつけてね、に身体がすごく軽くなった。
キックボードでの帰り道、まだ朝のひんやりした風を受けながら平和な時を過ごしていた。
鼻歌でも歌ってしまいそうだ。
人と一切話さず体調も優れなかった昨日…からのこの温もり、人肌。良いな。
もう一度さっきの会話を思い返しては笑みをこぼす(傍から見たら、朝っぱらからキックボード乗りながらニヤけてる若造は気持ち悪い他ないが、マスクしてたのが救い)。
ただ、最後の自分の言葉。
ありがとうございます。
が、少し気掛かりだった。
気をつけてね、のお返しは、
行ってきます。じゃないのか、と。
ああ、なんであのとき僕は行ってきますと返さなかったのだろう…
と、急にげんなりしてしまった。
これの理由は考えるまでもなく、僕が独り身で行ってきますを言う相手がいないから(同居人は居るが彼女は僕より出るのが早いしそういった挨拶もお互いしない)。
言わなくても、それはそれで良い時間だった、ちゃんと会話にもなってた。
でも、行ってきます、が言えたならもっと和んだことだろう。
気付いてしまった僕は、少し切なくなった。
頭痛が酷くなりませんように。
遠出から帰ってくる同居人に、おかえりと言える僕でありたいな。
言ってみようかな。
なんて返されるかな…
兎にも角にも、今朝のおばあさん、あなたとの出会いで僕は当たり前の忘れかけていた何かに気付かされた気がします。
ありがとう。
それじゃ、また。