ミジンコにケチャップかけてみた。

日々のつぶやき。どうぞ、よしなに。

暗証番号

今日は、柄にもなく部屋を掃除した。
とてつもなく暇を持て余していたから。

掃除中、使ってない机の引き出しの中から中学のとき使っていたガラパゴス携帯が出てきた。
充電器も奇跡的に発見。

掃除中あるある。
出てきた過去の思い出に浸って動けなくなる現象。

ノスタルジーを感じながら携帯を開いた。

が、ロックがかかっていた。

暗証番号4桁。

まったく覚えていなかった。

中学時代、なにかとこじらせていた僕。
安直な数字を入れるとは思えない。
当の本人のはずなのに、なんだか悔しい。

謎の闘志に燃える。

何がなんでも解除してやる。

僕は思い当たる数字を片っ端から入れていった。

自分の誕生日、好きだったあの子の誕生日、
家族の誕生日、阿部サダヲの誕生日、
ヨロシク、ゴクローサン…

"パスワードが違います"

全部、当てはまらなかった。

悲しかった。
大人になった僕に、子どもの頃の考えなんてもう分からないのかと諦めた。

そのときだった。

『4107』

ふと頭に浮かんだ数字だ。

何気なく入れてみた。


…開いた。


『4107』


良い、大人。


大人の何もかもが気に入らなかった中学時代。
何かと自分の世界に入っては塞ぎ込んで、こじらせていた時代。大人は何も分かってくれない。自分はそうはなりたくなくて、そんな大人になんかなりたくなくて、ずっと子どものままでいたくて、でも時間は待ってくれないと知って、いつか大人になってしまうなら、せめて僕は…って決めた、なけなしの、4桁の、僕の願いだった。

『4107』

良い、大人…か。

僕は、なれたのかな、良い大人。

当時の僕の予想通り、確かに時間は待ってくれなかった。年齢上も法律上も、僕はもう大人になってしまった。

でも気持ちは…どうだろう。

実際のところ、どこからが大人なのか僕には分からない。僕からしたら、上司のあの人は大人だし、でも年下の彼や彼女のほうがよっぽど大人に見えるときもある。近所のおばあちゃんは、本当は僕より年下なんじゃないかってくらい笑顔が愛らしくて少女のようだし、僕は…僕は、大人か、子どもか。

きっと、迷ってるな。

当時の僕がいう、良い大人の答えをまだ見つけられずにいるから。

でも、当時の僕からしたらいまの僕は、あのときの嫌いな大人の類になってしまっているんだよね、もう。
厭世的なのも、なかなか自分を出せないのも、根は当時と変わらないけれど、残念ながら大人だ、僕は。
僕の思ってた、嫌いな類の大人。
だから良い大人ではない。
何が良いの基準かは僕自身の自己評価になってしまうけれど…うん、僕は、良い大人じゃないよ。

だから、そのままにしておこう、パスワード。

二度とこの携帯を開けるときが来ないように。

もし開けようとしても開けられなかったら、それはきっと、僕の願い通りの僕になっているってことだと思うから。

それじゃ、また。

(ちなみに部屋は3分の1も片付きませんでした。)